長崎明誠高校は総合学科システムにより、毎日の学習活動がなされています。
保健体育科の学習内容も、普通科、専門実業科(農・商・工・水)などとはいくらかの違いがあります。体育系大学への進学や企業スポーツを目指す生徒や、
将来、スポーツ関連企業への就職を考えている生徒のために、スポーツ、
専攻体育、トレーニング科学、スポーツ生理学の各講座を開設しています。
本年度、小生が「スポーツ生理学」を担当していまして、現在、2年生10名、
3年生9名の19名を対象に授業を2単位行っています。履修している生徒は
全員が運動部の主力選手クラスで、熱心に受講しています。収集した資料
などをもとに、スポーツ生理学に関する質問集をまとめてみました
実際、講座での講義にも使用していますが、スポーツに打ち込んでいる
みなさんにも関連のあることばかりですので、一緒に考えてみましょう。
ご意見などいただければたいへんありがたく思います。

できる限り多くの資料に目を通し、いろんな角度から調査研究をしましたが、
何せ浅学非才の田舎教師の私論も多く含まれております。
この答えがすべてではないことを、念のために申し添えます。

監 修 緒 方 広 道(長崎県立長崎明誠高等学校)


参考にさせていただいた文献など

『スポーツ生理学』 朝倉書店
『運動生理・生化学辞典』  大修館書店
『選手とコーチのためのスポーツ生理学』 大修館書店
『スポーツコーチの心理学』 大修館書店
『スポーツトレーニング教本』 大修館書店
『新しい体育・スポーツ理論』 大修館書店
『現代保健体育』 大修館書店




スポーツ生理学に関する質問集


《運動からの回復に関する質問》


#1 運動中のおもな燃料としては、どんな食物が役立つのですか?

3つの大きな栄養素があります。@タンパク質A炭水化物B脂肪が分解され、
運動エネルギー(ATP)を生産するのですが、運動中の無気的解糖作用(乳酸系)によって、ATPを生産する場合に、そのエネルギー源として使用されるのは、炭水化物のみであるのです。運動活動中の主たる燃料は、炭水化物と脂肪で
あることはよく知られています。中でも、炭水化物(グリコーゲンとグルコース)は、極めて重要な燃料となるでしょう。数時間、あるいはそれ以上持続する
長時間の持久性運動(マラソン・トライアスロンなど)の間は、脂肪もまた重要な燃料となります。試合終盤になるにつれ、脂肪が燃料として消費される割合が
多くなりますが、ラストスパートやラストワンプレーの頑張りは、やはり炭水化物
の燃料貯蔵量が大きくものをいうのです。筋肉の疲労は筋グリコーゲンの消耗
とともに起こることが知られています。したがって、常に十分な筋グリコーゲン
貯蔵を維持することは、たいへん重要なことと云えましょう。バランスよく食物を
摂取することが重要ですが、試合前は炭水化物(ごはん類)が望ましいという
ことです。ラグビーの試合では始めと終わりが重要な鍵を握ることはみなさん
ご承知のことです。このスタートダッシュとラストスパートの燃料そのものが
炭水化物ということになります。樫山トレーナーから「飯を喰え!!」と日頃から
よく云われていますね。まさに、飯=炭水化物なのです。


#2 十分な回復には、運動と運動との間に
どれくらいの時間と栄養が必要ですか?

これについては、行う運動競技の種別によって大きな差があるでしょう。さらに、身体が普通ではなく疲労困憊の状態であるだろうから、個々の精神力が少な
からず作用することが考えられます。気合でいくらかは乗り切れるものの、
やはり栄養摂取が極めて大事になってきます。全力で走り相手とぶつかるなど、ラグビーは激しいスポーツの代表的なものといえましょう。このトレーニングを
数日間連続して行うと、通常通り炭水化物を摂取していてもグリコーゲン貯蔵量は非常に低いレベルまで落ちていくでしょう。この状態から慢性疲労が始まっていくのです。運動後の筋グリコーゲンの回復は、通常食を摂っていても24時間
で完了しますが、通学や学校活動でかなりのエネルギーが消費されますので、
慢性的な不足状態が続きます。激しいトレーニングによって筋グリコーゲンを
減少させた後、高栄養、高糖質食品を運動後30分以内に摂取した場合、
筋グリコーゲンの貯蔵量を2倍近くまで増やすことができます。筋グリコーゲン
荷重、つまり超回復といわれる方法です。餡パン、おにぎり、ゆで卵、チーズ、
牛乳、100%果汁、ヨーグルトなどが手軽に摂取できるので適しているのです。


#3 ときどき、気力喪失状態(Staleness)に陥ることがあります。
気合は入っているつもりですが、なぜか気力が失せてしまうのです。
なぜこのような状態が現れるのですか?

スポーツ生理学というより、スポーツ心理学の領域に近い問題であり、難しい
ので、はっきりとした解答ができる確信がありません。推測の域を出ませんが、おそらく慢性疲労に密接な関係があるか、あるいはそれが間接的にでも原因となっている可能性が否めません。激しいトレーニングにより、筋グリコーゲン
貯蔵量が底をつき、慢性的な疲労が蓄積していくのでしょう。きちんとした食事
で通常量の炭水化物が摂取されていても、激しいトレーニングは活動筋の
グリコーゲン貯蔵量を急激に低下させます。気力が萎えているなあと思われる
時は、叱咤激励もひとつの有効な手段ではありますが、いま一度食生活を
見直してみる必要がありそうです。腹が減っては戦はできぬということでしょう。
また、前述した栄養不足による慢性疲労の他にも、気力喪失状態(Staleness)の原因には、活躍の場が薄いことによる退屈、選手起用などに起因する憂鬱、
競技そのものへの興味の欠落などのような心理的要因が深く関係している
可能性があるようです。現場で指導するコーチは、それらの原因を慎重にかつ、合理的に探り、選手の意識高揚を図らねばなりません。気力が萎えている
プレーヤーに対し、暴言を吐いたり、無理を強いたりなどの乱暴な行動などを
決してとってはなりません。


#4 ウォームダウンとはスポーツ生理学的にはどのような
効用をもたらすのでしょうか?

乳酸が一時的な筋疲労を引き起こすことはよく知られています。エネルギーを
乳酸系にかなり頼っているような運動から回復するためには、筋と血液から
乳酸を除去することが重要となります。疲労困憊した運動後の回復期には、
身体を全く安静にするよりも、ウォームダウン:軽い運動(歩行・ジョギングなど)を実施する方が血液および筋乳酸の除去のペースが上がることが実験によって立証されています。おそらく、ウォームダウンの重要な生理学的効果は、筋と
血液からの乳酸の除去のペースをアップさせる要因となります。ウォームダウンがなされないと、乳酸の除去に倍近くの時間を要することになります。乳酸の
迅速かつ確実な除去は、運動後筋肉痛や凝りを軽減することに大きな効果を
発揮すると思われます。


《筋機能とウェイトトレーニングに関する質問》

#5 筋痛はなぜ起こるのでしょうか。またその原因は何なのでしょうか。
どのようにすれば筋痛を最小限に抑えることができるのでしょうか?

誰もが運動後の筋痛を経験していることでしょう。筋痛にはいろんな理由があると思われますが、主な原因の一つは筋や腱の結合組織の損傷が考えられます。特に伸張性収縮(例えば、持ち上げたダンベルをゆっくり戻す行為)に最も
激しい筋痛が見られることが確認されています。いったん収縮した筋が、強い
張力を受けながら引き伸ばされているのですから、腱と筋線維に連なる結合
組織構成要素が強く引き伸ばされることになるのです。これらのことから、
ウェイトトレーニングでは、単に持ち上げる行為よりも、ゆっくり力を入れながら
筋を伸ばす行為が大切なトレーニング方法であることが理解できますね。筋痛
の予防および緩和の方法に関しては、次の二つの方法が有効であるとの示唆
がなされています。

@ストレッチ(筋の伸張運動)は、筋痛の予防や緩和にも極めて有効であることが報告されています。ただし、急激に跳んだり、勢いをつけて強く引っ張ったり
するストレッチは、結合組織を損傷するおそれがあるので、十分な注意が必要
でしょう。

*ラウンド前に、部員と一緒にストレッチを念入りにやっています。スイングの
リズムも良くなるし、後に疲れを残さないようです。ぼちぼち50歳台の大台に
突入しますので、身体の手入れに少々気を配っております。全行程バッグを
担ぎ、歩いてのラウンドですが、藪や山の中の歩行スピードは高校生の若者と
云えど小生にはまったく及びません。野山を歩く機会がほとんどない温室育ち
の現代っ子と云えばそれまでですが。

A一日あたり100mgのビタミンCの摂取(一日あたりの適量の約2倍にあたる)は、トレーニングによって起こりうる筋痛を防止するか、あるいは、少なくとも
緩和する効果があるようです。ただし、ビタミンC摂取がもたらす価値は科学的
実験によって証明されているわけではなく、被験者のコメントによるものです。

*学校の近くに「百姓マーケット」といって、地場山海の富を生産者が持ち寄り、
陳列販売するところがあるんです。今の季節は路地物の青檸檬がすばらしい。
味、香り、新鮮さなど輸入物などはるかに及ばない逸品です。飲み物は薩摩産芋焼酎の湯割り一筋(4:6)。↑のレモンを加えると血液はさらさらと流れ、動脈硬化、脳卒中の予防に効用がありますが飲み過ぎにはくれぐれもご要慎!!


#6 スポーツ能力に密接に関連する2種類の基本的な筋線維《FT(速筋)・
ST(遅筋)》の仕組みはどのようになっているのですか?

ひとつの筋線維は、必ずひとつの運動神経(ニューロン)のみで支配されます。
運動神経とそれが支配するすべての筋線維を合わせて、運動単位と呼びます。
骨格筋運動単位は2つの型があります。それぞれが持つ特殊機能はまったく
異なっており、それが各種スポーツ能力に関して極めて重要な要因となります。
2つの基本的な骨格筋運動単位(筋線維型)である、速筋線維(FT)と遅筋線維(ST)は、どのような種別のトレーニングによっても相互交換ができないことを
理解しなければなりません。人類の筋組織には、民族などの歴史により一定の線維型の配分が遺伝的に決定されていることに注目しましょう。オリンピック100m決勝の顔ぶれを見てください。ずらりと黒人選手が並びます。その中に
割って出ようと、忍者走りの末続慎吾選手も頑張ったのですが、世界の壁は
とてつもなく厚かったようです。FTおよびSTは適正でかつ計画的なトレーニングによって筋の太さと代謝能力を増大させることができます。FT線維は無酸素的
な運動能力に適しており、100m、走り幅跳び、投擲などのような瞬発的な種目が代表的なものです。ST線維は有酸素的な運動能力に適しており、マラソン
などの持久的な種目に使われます。野口みずき選手が高橋尚子選手に続き、
連続して金メダルに輝き、渋井洋子選手が昨日のベルリンマラソンで日本最高記録、世界歴代4位の好記録で優勝を飾ったことを見ますと、日本人に優性的
に受け継がれてきた遺伝子であるのでしょうか。ラグビーにおいては、スクラム、タックル、スタートダッシュなど瞬発的な動きを要する場面が随所にあり、長時間走り続けるという持久的な強さが求められます。その両方の筋をバランスよく
増強するためには、計画的に能率的にトレーニングを行う必要があります。FT
線維を太くし、パワーを高めるためには高強度短時間の運動が適し、ST線維を太くし、スタミナを高めるためには、低強度長時間の運動が適しているでしょう。要するに、練習中は常に集中し、何のためのトレーニングであるのかを理解
しながら、全力で取り組まねばなりません。また、コーチはその目的、意義を
正確に示唆して取り組ませることが肝要でありましょう。

*FT=fast-twitch muscle fibers  ST=slow-twitch muscle fibers


#7 ウェイトトレーニングはスポーツ能力を向上させることに役立つ
のでしょうか。やりすぎて、筋硬化(muscle-bound)を引き起こしたり、
身体の柔軟性を低下させるようなことがないのでしょうか?

スポーツ能力とウェイトトレーニングプログラムについては諸説があり、論議が
盛んになされているのですが、数多くのスポーツスキルの向上に顕著に役立つ
ということを信じています。柔軟性には2種類に分けて考えられます。静と動の2種類ですが、関節の可動域を静的な柔軟性とし、動作に対する関節の抵抗性を動的な柔軟性としています。静的柔軟性が一般に考えられている”柔軟性”でありましょう。静的柔軟性はウェイトトレーニングによっても、ストレッチなどの伸張運動によっても改善されるでしょう。すべてのスポーツ活動や身体運動で、柔軟性の優劣は身体運動能力の極めて重要な要素であり、重度な筋・関節傷害を防止することに役立ちます。いろんな研究成果が発表されているのですが、これだけは断言できるでしょう。ウェイトトレーニングのやりすぎは筋硬化を起こさないし、柔軟性を低下させることもありません。実際に、ウェイトトレーニングによっ
て柔軟性が一貫して向上することが明らかになっています。筋硬化という言葉そのものが誤りであって、そのような心配は捨てるべきでしょう。ウェイトトレーニングに熱心に取り組んだ結果、筋力が増大して運動の速度が向上することが多くの研究によって示されています。さらに、筋が肥大していきますが、関節の可動域を制限するほどではないようです。ウェイトトレーニングを身体能力向上に反映させるためには、短時間の単一の静的筋収縮や1回のみの等張性試技だけでは筋力の向上も見込めないし、運動スキルも良くならないでしょう。いずれにしても、目指す効果を得るためには、過負荷(オーバーロード)の原則を遵守して、継続的努力が不可欠であるということです。気休めに来て、軽い負荷で2〜3回やったら飽きて止めるようだったら、いつになっても効果は現れないということです。(このような輩は耳かき部隊と呼ばれていました)

*過負荷(オーバーロード)の原則=筋は、普段常用しているより強い筋力を
行使すれば肥大して強化される。


#8 競技者はシーズン中にもウェイトトレーニングに励むべきでしょうか?

現在、高校ラグビーは最終目標花園を目指してのいわばプレシーズンであり、最後の追い込みに余念がないところでしょう。この時期は筋力を高いレベルに
保つ必要があり、週2回程度のウェイトトレーニングは必須であると思われま
す。シーズン中のウェイトトレーニングについては、競技者個々人の筋力がどの程度まで達しているのかということが大きなポイントになりそうです。オフシーズンやプレシーズンでのトレーニングですでに目標値の筋力に到達していたならば、その筋力の維持のために、週1回程度のトレーニングでも十分ですが、シーズン中に筋力が低下したり、さらに筋力を増強させる必要性が生じた場合は、少なくとも週2回の頻度にアップさせるべきでしょう。常時競技に出場している選手は、競技そのものがトレーニングとなっていますが、競技に出場の機会が薄い選手については、なんらかの体力維持の方策をとる必要があるでしょう。このように常に備えている選手は、やがて出場の機会を与えられ、立派な競技成績を残すことにより、常時出場を求められる主力選手へと成長していくのです。シーズン中のトレーニングでは、プレシーズンで用いたプログラムにしたがい、毎週コンスタントに行いましょう。また、上半身、下半身のバランスを考慮して行うとさらに効果的でしょう。


#9 サーキットとはどのようなトレーニングでしょうか。それは、競技者が
試合に備えるためには効果的なトレーニングになるのでしょうか?

競技選手が試合に備えて行う効果的なトレーニング方式のひとつに、サーキット
トレーニングがあります。このトレーニングにはいくらかのステーションがあり、
それぞれのステーションで決められた時間内に、設定された身体運動を行います。ひとつのステーションで身体運動が終了すると、できるだけ迅速に次のステーションへと移動します。そこで、また別の身体運動を行うということになります。
このトレーニングは、ひとまわりすべてのステーションで身体運動をやり終わった
ときに1つのラウンドが終了します。サーキットトレーニングは、専門とするスポーツに不可欠な要素が向上できるような身体運動が含まれていなければなりません。ラグビーは筋力、持久力(筋・全身)、瞬発力、調整力などすべての項目が必須となるでしょう。サーキットトレーニングの設計は効率的であることが必要となります。スポーツ種別、競技者レベルに応じて、6〜15のステーションを設定し、1ラウンドの所要時間は10〜20分がよいとされています。これをレベルに応じて数回ラウンドするのです。各ステーションの間では15秒程度のレストをとるのが一般的のようです。重量負荷のステーションでは最大筋力の50%程度で、設定時間内にできるだけ多くの回数をこなし、オールアウトしてしまうようなプログラムが理想的です。続いている2つのステーションでは、同じ筋群を作用させないような順序で配列することが肝要です。トレーニングの頻度は、週/3回が理想とされ、目指すトレーニング効果を期待するためには、すくなくとも6週の継続トレーニングが必要となるでしょう。サーキットトレーニングをオフシーズンに活用することは、筋力、パワー、筋持久力、全身持久力、調整力を飛躍的に向上させ、来るべきシーズンへの明るい展望が開けてくることでしょう。

*ステーション=身体運動を行う拠点。腹筋−背筋−懸垂−スクワット・・・。
*オールアウト=その場、その瞬間で全力で力を発揮すること。云わずと知れた、NAGASAKI KITA RUGBYのモットー。小生がこよなく愛する言葉で。


#10 競技選手が求める筋力レベルに達するためには、
毎日のウェイトトレーニングが必要なのでしょうか?

どのようなトレーニングプログラムが最適であるのでしょうか。この問題は一概
に論じることはできないでしょう。それぞれ一長一短が存在することは明らかであるためです。この点からいえば、どのようなプログラムが最良であるかという
問題設定は、実は適当ではないようです。一般的な理論からすると、週/4回頻度のトレーニングが、比較的長期間にわたる継続が許容される最大限であろうといわれています。最近の研究では、週/3回のトレーニングで、慢性的な疲労を懸念することなく有意な筋力の向上が期待できると認められています。この際、過度のトレーニングプログラムでは、疲労回復が不十分となり、そこから生じる慢性的な疲労が生じることを認識しなければならないでしょう。1日ごとの回復とともに、セットごとの適切な回復ということも常に心がけておくべきでしょう。上記のことから、毎日のトレーニングについては否定的な意見を述べざるを得ません。種目に応じたトレーニングと合わせて、ウェイトトレーニングを毎日行うことは勧めることはできません。この場合に生じるであろう慢性疲労は、かなりの確率で持てる運動能力を著しく低下させる要因となる危険性が指摘されています。


#11 はっきりした筋力の増大をもたらすには、
ウェイトトレーニングをどれくらいの期間行えばよいのですか?

正確に、真剣に、さらに懸命に週/3回程度のトレーニングに励むという条件を
満たしていれば、どのような負荷抵抗プログラムがなされても、トレーニング開
始から4週間程度で筋力の増大が認められるでしょう。筋力の向上に合わせて、さらに負荷を上げてトレーニングを続行すれば、8週間後には顕著な筋力アップと、外見的な筋組織の増大が観察されるでしょう。いずれにしても、正確にかつ真剣に一生懸命取り組むという絶対条件があります。


《酸素運搬系に関する質問》


#12 喫煙は運動能力にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?

熱心にスポーツに親しんできた人は、ほとんどが”習慣的な喫煙は息切れを
おこしやすい”ということばを知っているでしょう。愛煙家たちは、簡単に信じようとはしませんが、いくつかの科学的な根拠が存在するようです。特に長年の習慣的な喫煙は、気道の抵抗が増大し、その結果、肺に出入りする空気のスムーズな動きを困難にする。生きていくために、肺は一定量の空気を換気する必要があるために、呼吸に関係する筋(横隔膜・肋間筋、腹筋など)は、余計な大きな仕事をせざるを得ません。・・・ということは、呼吸筋がより多くの酸素を要求するために、運動作業を司る骨格筋には限られた少量の酸素しか供給されないという深刻な事態が生じるおそれが発生するのです。激しい身体運動中、習慣的な喫煙者の気道抵抗は吸わない人の2倍に達することが報告されています。運動前24時間たばこを吸わなかった人では、気道抵抗がいくらか緩和されるものの、たばこを吸わない人と比較すると、まだまだ大きいようです。この点から、習慣的な喫煙者については、肺換気能力、および最大酸素摂取量が減少して、持久能力が明らかに低下することが示されています。


#13 セカンド・ウインドとはどのようなことでしょうか。
また、その原因は何なのでしょうか?

セカンド・ウインドと呼ばれる現象については、これまで耳にしたことがあるでしょうし、おそらく体験したこともあるでしょう。激しい運動の初期におこる苦痛感や疲労感や倦怠感から、その後はやがて楽になり、快適でストレスの薄い感じへの変換です。これにはいろんな要因があるのですが、言葉が示すように、より快適でスムーズな呼吸をともなうようです。セカンド・ウイングの発生現象には、次のような要因が考えられるでしょう。

@適度なウォーミングアップ
A血流の変化による乳酸の除去
B局部の筋疲労の軽減
C余裕からくる心理的要因
Dスムーズな換気調節による息切れの軽減

余裕をもって、早めに練習場や競技場に入り、落ち着いた状態で十分な
ウォーミングアップを行い、練習や競技に備えることが、能率のよい練習や
競技でのベストパフォーマンスを発揮する要因となりそうです。


#14 走ると必ず脇腹の痛みが襲ってきますが、なぜ起こるですか。
その原因は何ですか。どのようにすれば防ぐことができますか?

経験した者にしか解らない、何とも云えない痛みでありますが、大部分の競技者は大なれ、小なれ経験しているのではないでしょうか。脇腹の痛みは、ふつう、脇腹や胸郭部の疼痛であるものと理解されています。セカンド・ウインドと同様に、運動の初期に発生し、少々我慢して運動を継続していくと静まるようです。普通は何とか我慢して頑張れるのですが、軟弱者に至っては、スピードを落としたり、ストップしてしまうこともあります。この苦痛の主因については、明確には明らかにされてはいないのですが、たぶん、血液の流れが不順になって、横隔膜筋や肋間筋の酸素欠乏(低酸素)が関係しているのではないでしょうか。あいにく、現代医学をもってしても、これといった治療法はないようです。ただ、気合いで乗り切るだけでしょう。気合いだ〜。


 #15 高地でのトレーニングは持久性能力を高めることになるのですか?

高度が1200m〜1500m以上であれば、競技者の持久性能力は、平地や
低い高度の所より低下することを理解する必要があります。さらに、高地での
運動終了後に、肺換気量や心拍数の数値が高くなり、大きな疲労感を感じる
ことになるでしょう。”大きな疲労感”・・・。ここに高地トレーニングの意義があるのです。一般的に中等度の高地(3000m程度)でのトレーニングが、効率よく持久性能力を高めることができるとされています。このトレーニング効果は、馴化と呼ばれる課程によっておこるようです。馴化の際、血液の循環作用によって多量の酸素が運搬されるなどのいくつかの生理的変化が生じることになります。顕著な変化の代表的なものは、赤血球とヘモグロビン量の著しい増加でしょう。馴化によって運動能力がはっきりした向上を示すのは、高地に数週間滞在したあとになるとの報告がされています。非常に高い所(5000m以上)では、必ずしも運動能力が馴化によっては、向上しないということが一般的には考えられています。運動継続時間が1分以内の種目については、さほどの影響は受けないということが報告されています。

*馴化(Acclimatization)=継続的に居住区と異なった気候、および高度に
さらすことによってもたらされる生理的適応。


《有機的トレーニングと無機的トレーニングに関する質問》


#16 インターバルトレーニングは、効果的なトレーニングなのでしょうか?

インターバルトレーニングプログラムは、運動期と回復期との交替を繰り返し
ながら行うトレーニングです。回復期には、通常、軽い運動を行い、完全に
休憩するものではありません。このトレーニングシステムは、陸上競技や競泳で用いられたものですが、現在では、広く、球技や格闘技などでも積極的に活用されているようです。このトレーニングの最大の利点は、3つのエネルギー系(ATP系、無機解糖系、有酸素系)のすべてを発展向上させることでしょう。


#17 ウォーミングアップはどのような効用をもたらすのですか?

競技者が試合やトレーニングに備えて準備運動(ウォーミングアップ)を行うのは
大変有意義なことでしょう。

@ ウォーミングアップは体温と筋温をほどよく上昇させ、酵素の活性を促進させるでしょう。その結果、骨格筋の代謝を増大させる効用があります。体温、筋温のほどよい上昇は、骨格筋への血流と酸素の供給をスムーズにさせる働きがあります。さらに、骨格筋の収縮時間と反射反応時間がよくなるでしょう。
A突然の激しい運動は、心臓への血流供給を不適正なものにするため、場合に
よっては心臓マヒなど、生命に関わる危険性を孕んでいます。ウォーミングアップ
はこの危険性を減少させるにことになるでしょう。
B適正なウォーミングアップにより、筋や関節が暖められていたら、激しい競技
により起こりうる筋や関節の傷害を避けることができるでしょう。ラグビーや格闘技、スプリント競技などにあてはまります。
Cスポーツ心理学的には、競技者は十分なウォーミングアップを行わないと、競技本番で目指すパフォーマンスが発揮することが難しいと考えられます。

ただ、これは個々の競技者の資質によるもので、精神だけを高めて競技に臨むことによって、高い競技力を発揮するようなタイプの選手もいることを理解すべき
でしょう。


#18 適正なウォーミングアップを行うには、
どのような種類の運動を取り入れればよいのでしょうか?

一般的には、伸張運動(ストレッチ)−柔軟運動−フォームを考慮した種目運動
の順番で行うのが適正でしょう。

●伸張運動(ストレッチ)
筋の引き伸ばしは、トレーニングおよび競技の前後に行うとよいでしょう。まずは、ストレッチから入ります。激しい運動ではありませんが、体温や筋温を適度に高め、より激しい運動をしたときに生じるおそれがある筋の断裂を防止するのに役立つでしょう。ラグビーは全身を駆使する激しい種目ですので、主たる筋群、各関節を、すなわち、頸部、背中、大腿筋、腹筋、アキレス腱、胸部、腰部、股関節、背骨、肩筋、足関節、腹部、膝、つま先などを含めるべきでしょう。この種の運動は、いきなりジャンプしたり、ゴリゴリ捻ったりせず、20秒間ほどそのままの姿勢で伸ばしているのがよいでしょう。

●柔軟運動
この運動は、伸張運動(ストレッチ)の後で行うのがよいでしょう。柔軟運動は
積極的な筋収縮をともないます。これにより、体温と筋温をいっそう高めることに
なります。この運動は、とくに種目に密接に関係する主要な筋群や関節部に施すべきです。運動のやりすぎにより、筋群を疲労させないように留意すべきでしょう。せいぜい10分程度が適正な運動時間であると考えられています。

●フォームを考慮した種目運動
ウォームアップの最後には、その種目に用いられる動作を組み込んで行うべきです。FWではラインアウトの投球や捕球、キッカーは当日の風を読んで、最終の調整を行います。この運動では、筋温の上昇や血流のスムーズな流れが、その種目に作用する筋群に適切なものになり、さらに、直接その種目に関係する手指−眼力の協応と、他の神経群機構のウォーミングアップとなるでしょう。


#19 適正なウォーミングダウンを行うには、
どのような種類の運動を取り入れればよいのでしょうか?

競技会やトレーニングの直後に軽い運動をするものです。競技者およびコーチはこのような動的回復を積極的にしたほうがより速く回復するし、次へのステージにスムーズに入れることは、経験的によく理解していることでしょう。血中乳酸の除去を早める動的回復は、激しい運動の間に急速に回復しなければならない場合には常に重要なものであるといえます。すなわち、血中乳酸量は、安静回復よりも、動的回復のほうが速く回復するということは、生理学的根拠により実証されていることなのです。いろんな種目のための、特別なウォーミングダウンの処方というものはありません。ウォーミングアップと同様の方法にて、その順序を逆にすればよいのです。フォームを考慮した種目運動は、競技終了直後に行うのがよいでしょう。その後、柔軟運動、その次にストレッチ運動と続ければよいでしょう。この場合、種目運動とストレッチ運動を最重点項目として捉えるべきでしょう。


#20 競技者は、オフシーズンにどんなトレーニングに励むべきでしょうか?

高校スポーツは年間を通じて何らかの大会が開催されているようですので、明確なオフシーズンというのは存在しないようです。試験中は2週間ほど、練習を休止することもありますが、俗にいうオフシーズンではないようです。高校ラグビーでは、全九州新人大会が終了する2月中旬から4月の新学期までが、オフシーズンに近い時期ではあります。ただ、この期間も練習試合や送別試合、長崎ではセブンズ、海外遠征、招待ラグビー・・・などが行われますので、実質的には
1年中活動していることになります。ここでは、一般的なオフシーズンの過ごし方を考えてみましょう。厳しいシーズンが終了して、競技者の身体には無数の傷が生じ、慢性的な疲労が蓄積していることでしょう。まずはこれらの傷の修復や疲労の回復が真っ先になされるべきことでしょう。そして、中程度の活動を続行して、体調管理、とりわけ体重をベストに限りなく近い状態に保つことを考慮したトレーニングプログラムをこなすべきでしょう。

@専門種目に関係が深い筋肉群の筋力と筋持久力を維持するように計画されたウェイトトレーニングを実施しましょう。
A低い強度、中程度の頻度での調整運動を実施しましょう。
B専門種目を含む種々のスポーツ活動や、レクレーション的なゲームを楽しみ
ましょう。


#21 スポーツ心臓とは何ですか。危険性はないのですか?

スポーツ心臓とは、熟練した競技者に見られる心臓肥大を指して用いられて
います。いまでは研究が進んで、そのメカニズムが解明されていますが、過去
においては、熟練競技者への偏見や非難の意がこめられていたようです。
それは、スポーツやトレーニングのやりすぎによって生じる心臓肥大(スポーツ心臓)は深刻な病的事例であり、生命に危機をもたらすものであるのだと・・・。
もちろん今日では科学的に解明され、熟練したトレーニングの結果おこる心臓肥大(スポーツ心臓)は、競技者の血液循環能力を飛躍的に向上させうるものであることが定着しています。明らかに、熟練競技者の心臓肥大の型は、専門とする種目に対応したものです。持久性種目競技者の心臓肥大は、持久性トレーニングが長期間にわたる努力を必須とし、その間、非常に高レベルの心拍出量が持続されることからもうなずけます。人並み外れた大きな心室容量は、競技力向上のためには是非とも必要な適応と云えましょう。瞬発的な力を発揮することが求められる競技者についても、同じようなことが云えます。最大パワーの発揮時に、断続的な動脈血圧の上昇を受け続けるので、肥厚した心室壁はそのような試練に繰り返し耐え、打ち勝つために必要であるという理にかなっていると云えます。


#22 1日に数回というトレーニング頻度は、規則的に行う1日1回の
トレーニング頻度より効果的なのでしょうか?

トレーニング効果を左右する要因の中には、トレーニングの強度、頻度、期間が
重要な鍵を握っていることは多くの研究者によって明らかにされています。すなわち、より強く、頻繁に、さらに長期間に渡ってのトレーニングほど、目指す大きな成果を得ることができるでしょう。ただし、トレーニング頻度で以前から問題になっていることは、1日に何度も行うことの価値なのです。1日に2度、3度と行うことが、規則正しく1日に1度行うことよりも効果があるのだろうか?
この課題についての研究はまだまだ十分ではないようです。ただし、1日数回の
トレーニングは陸上長距離選手や競泳選手、スキーの距離、スピードスケート
長距離選手が大きなトレーニング量を確保するためには必要なものとされています。現在のところ、持久的な要素が直接成績に反映される競技以外のスポーツでは、1日1度の規則正しいトレーニングより、1日数回のトレーニングがより効果的であるという根拠は示されていません。過度のトレーニング頻度は、慢性疲労の危険性を増大させる可能性があることを理解すべきでしょう。ただし、これらの問題は、常に「ALL OUT」で一所懸命に取り組んでいる競技者に当てはまるものであり、力の出し惜しみをしたり、気が抜けた練習やトレーニングに終止している者については、まったく当てはまらないものです。真剣に取り組まない限り、目指す効果は永遠に現れないということです。


#23 トレーニング効果の大きさに最大の影響を及ぼすトレーニング強度
レベルはどのように設定すればよいのでしょうか?

トレーニング効果に影響する要因としては強度、頻度、期間などがありますが、
もっとも重要な要因は、おそらく強度であろうと思われます。いかに酸素を体内に取り入れるかということが、競技者の体力レベルに大きく影響を与えることは研究されていますが、最大酸素摂取量(VO2max)を増大させるためにもっとも重要なインターバルトレーニングの要因は、トレーニング強度であることが示されています。10分走を、ただ漫然と走っていては効果はないのです。適切なトレーニング強度水準を決定するもっとも簡単な方法は、運動中の心拍数を測定することです。ラグビーの選手は試合時間中、常に走り続ける必要がありますね。バテない丈夫な身体をつくるためには、ランニング中の心拍数を最大心拍数の85%から90%になるほどのスピードにすべきです。この方法を用いるためには最大心拍数を知っておかねばなりませんが、最大心拍数を直接測定することは難しいことです。最大心拍数を合理的に推算するために次の公式が役立ちます。 ---最大心拍数=220−年齢---
トップダッシュでのトレーニングを行う場合は、運動中の心拍数が180回/分か、それ以上でなければ効果は見込めません。要するに、時間だけがだらだらと過ぎゆくような気合いの入らないランニングなどは、まったく時間の無駄でしかないのです。さっそく、今日の練習から実行してみようではありませんか。


#24 ランニングスピードを増すための効果的なトレーニング方法は
あるのですか?

ランニングのスピードに富む競技者は、いろんなスポーツで絶対的な優位に立つことができるでしょう。脚が速いということは、いち早く次の動作に移ることができ、有利に働くことになります。もちろん、脚の速さを競う陸上競技短距離については、そのまま勝敗へと結びついていきます。コーチや競技者は永年にわたり、いろんな方法を試行錯誤しながら、いくつかの練習方法を開発発展させてきました。すべてのトレーニング方法が科学的に評価され、かつ根拠が明確に明らかにされたものではありませんが、いくつかの方法を紹介してみましょう。

@一歩一歩の積み重ねでゴールに到達するのですから、ストライドを伸ばして
みましょう。ひざを高く上げることが、ストライドの伸びにつながります。
Aランニングは右と左の脚を交互に進めていくわけですね。より素早い動きが
スピードアップの絶対条件となります。脚の筋肉を強化して、脚力を高めましょう。

比較的簡単にできるトレーニングを考えてみましょう。

@牽引法…自動車や自転車、バイクなどでランナーを牽引するという方法ですが、基本原理は、車などがペースーメーカーとしての役割を果たすことです。ただ、これは危険がつきまといますので、慎重に行うべきです。25mほどのロープ状のゴムをポールなどに固定して、ゴムを限界点まで伸ばし、その勢いで走りきる方法があります。ゴムの張力は徐々に強めていき、決して無理をしないように注意しましょう。あまりにも張力が強くて、ひざや股関節を痛めるおそれがあるからです。ある報告では、この方法で5週間のトレーニングを実施、100y(91.4m)走で、平均記録を当初の10.5秒から9.9秒まで短縮できたとのことですが、科学的な研究はなされていません。
A坂を駆け下りる下り傾斜走は、牽引法と同様に速度アップを狙って用いられる
ものですが、科学的にその効果は証明されていません。多くの競技者やコーチは、これによりストライドやピッチが増大するという考えに疑問をもっているようです。このトレーニングの問題点は、傾斜があまりにも急でフォームを崩すおそれがあると指摘されています。下り坂の傾斜は、5%を越えない範囲で行うべきでしょう。
B坂を駆け上がる上り傾斜走は、時には階段登りを代用しますが、抵抗を加えて、脚力を高めようとするものです。これもまた、科学的な効果は明らかにされ
ていませんが、一部の研究者たちは逆効果さえあると考えているようです。これによると、駆け上がりによりストライド、ランニングピッチが減少するため、脚力やひざの揚力の増強から得られる効果が相殺されてしまうというものです。いろんな批判があるのですが、この登り傾斜走は広く一般的に行われています。ある研究者グループでは、駆け上がりと駆け下りを結びつけて実施する方法を研究中です。駆け上がりによって、ひざの揚力と脚力を増加させ、懸け下りによって、ストライドとピッチの増加を得ようとするのが主たるねらいのようです。

脚が速いということは、確かにDNAによる遺伝的な先天的要素もあるの
でしょうが、大部分は後天的な努力によってなされるものと信じます。
さあ、頑張りましょう。


《身体組成、体重の増減および栄養摂取に関する質問》


#25 身体の主たる構成要素は何ですか。それらは、競技的能力に
どのように関連するのですか?

骨格、筋、血液、脳など、人体は超精密なパーツによって構成されていますが、
基本的にはただ2つの要素で構成されているのです。身体が蓄える脂肪である
体脂肪とそれを除外した他の成分の総量である脂肪除外体重です。体内に蓄積されている体脂肪の量は、次の2つの因子で決定されるようです。

@脂肪蓄積細胞の数量  A脂細胞の大きさ

成人期に達すると、脂肪細胞の数量はほぼ固定され変動しません。小生の体脂肪率は推定25%程度、イチロー選手は8%程度のようです。脂肪細胞の数はほとんど差がないのですが、脂肪細胞の容量が大きく違うのです。日々ダイエットに励んでいる方々の場合、脂肪細胞数を減少させるのではなく、脂肪細胞そのものの容量を落とすことが主目的となるのです。スポーツを日常的に行っていない男子大学生の体脂肪量は15%程度と推察されます。女子ではこの値が26%程度まで上がります。トップアスリートになると、この値はかなり下がります。トップクラスのマラソンランナーになりますと、5%以下というのが平均的なデータでしょう。脂肪細胞および脂肪組織そのものは、運動に密接な関わりを持つATPエネルギーを算出するという生化学的活動はありません。このような理由で、余分な脂肪は、体重を増やしはしても、肝心な運動のための代謝手段(エネルギー算出)とはなり得ないのです。ほとんどの競技は自分で自分の体重を支えながらの身体運動と云えます。ランニング、体操、ウォーキングでは、余分な脂肪組織は邪魔者とさえなる厄介者なのです。一般的に女性の体脂肪率は男性よりも高く、競技スポーツでもハンディーとなることが多いと思われますが、シンクロナイズスイミングでは、女性がかなりのアドバンテージを有するようです。この種目の場合、女性が持つより高い体脂肪は、水中での体重を軽くし、競技に際して、単位運動あたりのエネルギー消費が少なくて済むことになるようです。
体脂肪量を体重から差し引いた重量を、脂肪除外体重とよびます。骨格、筋、
皮膚、や脳などを含んでいるのですが、骨格筋量に反映されます。脂肪除外体重の平均値は男子大学生で85%、女子で75%程度ですが、骨格筋量はその半分ぐらいを占めることになります。脂肪除外体重は、通常、競技能力と正の相関があると考えられています。大きな脂肪除外体重は、それだけ大きな骨格筋量を意味することになり、それは、潜在的な筋力発揮に結びついていくことなのです。筋力が大きいことは、ラグビーなどの対人接触スポーツやスプリント競技、投擲競技などでは重要なポイントとなります。

日頃の食事にも注意をはらって、「でぶっちょ」ではなく、「筋骨隆々」の
体躯を作り上げるのが、勝利への近道となるに違いありません。


#26 競技者が体重を増やしたいとき、
考慮すべき大切な事柄は何なのでしょうか?

暇で食いしん坊で動作が鈍い中年女性の方々は特にご注意ください。たいていの人にとって体重を増やすことなど簡単であります。何の努力も要しないことでしょう。残念なことにスポーツ生理学の分野では、これは体重が増えたということではありません。いわゆる「肥えた」と云われるもので、体重の増加の大部分が体脂肪であり、皮下脂肪となって身体全体を包み込んでしまうのです。これが健康上の諸問題を引き起こすことは云うまでもありません。ここで云う体重増加とは、理想的には脂肪除外体重のみが反映されることを指します。これこそが、アスリートたちが真に望む体重増加と云えます。すなわち、体脂肪は運動エネルギーを産出することはなく、脂肪除外体重の約50%を占める骨格筋が運動エネルギーを産み出すのです。よって、運動能力や運動適正は、脂肪除外体重量と正の相関があるのです。長く厳しいシーズンの間、競技者にとって、脂肪除外体重を増やし、また、そのレベルを維持することが現実の問題でしょう。無理のない範囲で以下の指針にしたがって実践していくことが、適正な体重管理となるに違いありません。ただし、競技者に重度の心臓疾患が認められる場合は、体重増加プログラムへの参加を勧めてはなりません。最大積載量500kgの少々エンジンがくたびれた軽トラックに重量2トンもの庭石を積んで、高速道を突っ走る走るようなものです。また、その家族及び近親者にも同様の既往症が存在する場合は、慎重に取り扱うべきであると多くの研究者は指摘しています。(この場合の家族及び近親者というのが、主に両親、兄弟を指しているのか、祖父母、叔父叔母まで拡大するのか、はっきりとした解釈はなされていません)

@脂肪除外体重を増やしたいのならば、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることが絶対条件となります。脂肪除外体重1ポンド(約0.45Kg)の増加のためには、消費カロリーより余分に2500kcalが必要となります。ただし、1日だけで摂取してはいけません。計画的な摂取が前提となります。毎日のカロリー摂取は1000〜1500Kcalを越えないように注意しましょう。
A毎日スポーツ活動をする若い競技者が1日に摂取するカロリー量は6000Kcal程度でしょう。彼らの1日あたりの平均カロリー消費量は5000kcalと予測されるからです。動物性脂肪を極力控えて、あまりかさばらない炭水化物を多く摂取しましょう。
B余分に摂取したカロリーが効率よく筋の成分となるように、高カロリーを摂取する体重増加プログラムの期間は、ウェイトトレーニングを含めて激しいトレーニングに努めなければなりません。


     #27 どのようにすれば、体脂肪を減らすことができますか?

推定される体脂肪量が10%未満の競技者については、体型的にも身体の機能的にも理想に近いものでしょうから、ダイエットに励む必要などありません。体脂肪率の1桁というのはすばらしいことで、相当な努力と自己管理がしっかりしていなければあり得ないことでしょう。いわば、ゴルフのシングルプレーヤーみたいなものでしょうか。オフが明けるのころには、多くの競技者はオフの間にたまった体脂肪を落とす必要に迫られるでしょう。人間というものは結構自分に甘くて、肥りすぎを認識している競技者は、体脂肪を落として脂肪除外体重を増やすことや、少なくとも、シーズン中に必要とされる筋力を維持することを望むでしょう。そう簡単にはいくとは思えませんが、目標に近づくためには、以下の指針が役にたつのではないでしょうか。

@純粋な体脂肪1ポンド(0.45kg)を取り除くには、3500Kcal分のプラスアルファ
のカロリー消費が必要となります。てれてれ動いても、カロリーは消費されません。てきぱき動くことです。
Aダイエットのための食餌療法では、マイナス分が2000Kcalを越えないのが
良いでしょう。理想的には、週あたり2〜3ポンド(0.9-1.35Kg)の減量でしょうか。
無理に行うと、リバウンドによりさらなる肥満の道をひた走ることになるのが見えています。
Bカロリー摂取量および消費量については、毎日毎週の収支をきっちり行う必要があります。目分量では、絶対といってよいほど自分自身を甘やかすことになります。
Cカロリーを積極的に消費してダイエットを行うことが理想であり、節食だけで
ダイエットを行うと、脂肪除外体重を減少させる要因となり、それにより骨格筋が
衰退して、競技そのものへのダメージになりかねません。
D毎日活動する競技者にとって、節食の下限は2000Kcalまでとすべきです。

これ以下ですと、空腹が続いて気合いが入りません。腹が減っては戦はできないのです。


#28 激しいトレーニングプログラムをこなしている競技者は、
大量のタンパク質補給を必要とするのでしょうか?

たいへん難しい問題に直面しました。多くの競技者が”プロテイン”という名のもと
で、粉末や錠剤、飲料などで摂取しているからです。諸説入り乱れている問題でもありますし、かたくなに信じて摂取している競技者の心中を察すると複雑な心境ですが。タンパク質は、特殊な環境条件(例えば、飢餓状態)での栄養失調改善では大きな効力を発揮しますが、通常はエネルギー栄養素としては用いられることはありません。タンパク質の主たる役割は、生体の細胞や組織の成長、および傷の修復と考えられます。タンパク質はアミノ酸を含む複雑な分子で構成されています。そのうち、いくつかの必須アミノ酸は生体内で自然に生成されますが、生成できない必須アミノ酸については、日常の食物によって摂取される必要があります。このように、日常の食物摂取においてのタンパク質の重要性は明らかなものといえます。通常、成人が1日に要するタンパク質需要量は体重1kgあたり1gであると考えられています。体重75kgの人は75gとなります。このタンパク質量は、全カロリーの15%がタンパク質源から得られるような、バランスがとれた食事によって、比較的簡単に摂取することができます。体重75kgの競技者が毎日3000Kcalの需要量があると仮定すれば、バランスの良い食事とは、100g余りのタンパク質を供給するものとなります。これまで多くのコーチや競技者が信じていることに反しますが、激しいトレーニング中であっても、タンパク質需要量が著しく増加することはないと云えます。このように、生体が通常必要とするタンパク質量は、身体活動が増大した場合でも十分日々の食事から摂取できるものです。タンパク質需要量は、体重を基準にして算定されるわけですから、筋量が増加すれば当然タンパク質の摂取量も増やす必要があることに注意せねばなりません。毎日きちんと練習に励んでいる、ラグビー選手の広道君の体重が80kgであるならば、毎日のタンパク質需要量は80gを摂ることになります。彼の1日あたりのカロリー必要量が4000Kcalであるとすれば、バランスのとれた食事からは15%程度がタンパク質が期待できるので、150gのタンパク質が与えられることになります。2倍近くの摂取量となり、簡単に彼の要求は満たされることになります。結論的には、タンパク質の過度な消費、とりわけ粉末や錠剤、飲料の形で、競技練習中に摂取することは必要とは云えませんし、積極的に勧めることでもなさそうです。事実、過度のタンパク質摂取は、脱水症の原因となる危険性も指摘されています。これはあくまでも、良質のタンパク質を15%含む、バランスに富む理想的な食事を摂っていることが条件であります。腹がいっぱいになればよしとするような食事では、まったく適用されませんのでご注意ください。

【参考】タンパク質が豊富に含まれる自然食品リスト
・穀物(米/麦/大豆など)・ミルク/チーズ/ヨーグルト ・卵 ・魚肉
・赤身の肉 ・レバー ・納豆/豆腐 など


#29 競技者への多量のビタミンとミネラルの補給は必要なんでしょうか?

大部分のビタミンは、脂肪および炭水化物の代謝に重要な酵素として貢献します。このように、ビタミンは自体ではエネルギーを産出することはないのですが、生命体にとっては必須のものと云えます。すなわち、これらは栄養素であると云えます。ビタミンは大きく水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの二つに大別されます。水溶性ビタミンの代表的なものはビタミンC(アスコルビン酸)とビタミンB複合体ですが、これらは、体内に貯蔵されるものではないので、常時食物から補給されなければなりません。水に溶けて体内には貯蔵されませんので、余分に必要量以上が摂取された場合は、安易に尿から排出されることになります。水に溶ける分はまったく問題がないのですが、脂溶性ビタミンについては、少々厄介なものとなります。ビタミンA・D・E・Kが脂溶性ビタミンの代表的なものですが、基本的には肝臓に貯蔵されますが、同時に脂肪組織にも貯蔵されます。このことから、この脂溶性ビタミンは、日常的に補給する必要がないと同時に、限度を超えて過度に摂取し蓄積された場合は、人体に有毒な影響を及ぼすことを意味するのです。ビタミン欠乏症は重大な疾病、慢性疾患、時には死亡さえまねくことが報告されていますが、欧米先進諸国や日本では極めて希であると云えます。ビタミンの日常の必要量は少量に過ぎず、四季折々の変化に富んだ食物からは、容易に得られるでしょう。通常、私たちが摂取する炭水化物及び脂肪性の食品には
ビタミンが含まれていますが、もっとも豊富な供給源は、ほうれん草など、緑の葉が特に多い野菜でしょう。ミネラルは人体にごく少量の存在が認められる無機化合物であり、やはり適正な人体の機能には重要なものと云えます。カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、鉄分、ヨウ素がより重要な必要ミネラルと云えます。ビタミン同様、ミネラルも先進諸国では欠乏症はほとんど報告されていません。
ヨウ素は普通の食卓塩に加えられていますが、ほとんどのミネラルは、私たちが
食する他種類の食物の中に自然に配合されています。たとえば、牛乳や乳製品
にはカルシウムが豊富に含まれ、レーズンや麦芽にはカリウムが多く含まれて
います。動物性蛋白食品はリンの最適な供給源となります。赤身の肉、ことに
レバーは必要量を十分に満たす鉄分を供給します。ナトリウムは少量の食塩で
十分でしょう。運動に関して、身体活動が円滑に行われている間、ほとんどのビタミンやミネラルに対する必要量が著しく増加するということはありません。ただ一つの例外は、鉄分に対する需要でしょう。鉄分は赤血球中にあって、血液の酸素運搬能力を一手に引き受けています。男性に比べ、女性の血液中の鉄分は激しいトレーニングの後には著しく減少することが認められています。特に過多月経の場合は、食事の中に鉄分を強化して供給することも検討しなければならないでしょう。ただし、過度の鉄剤投与は毒にもなりかねないのです。鉄剤の補給を考えている競技者は、まず第一に信頼のおけるドクターに相談すべきでしょう。ビタミン剤やミネラル剤を用いることは、競技者の間ではかなり一般的なことであると考えられます。たとえば、オリンピック選手の約80%がビタミン剤や
ミネラル剤を服用しているとのレポートがあります。この中の何人かは、補給に
より競技成績が伸びたと自負しているようですが、競技者や薬剤メーカーの主張を支持するような科学的根拠はいまのところ存在しません。結論的には、日常必要最小限量を越えるビタミンやミネラルの追加補給は、決して身体能力を飛躍的に増大させるものではないようです。さらに、日常必要最小限量は、変化に富んだ日常の食生活から容易に得られるということでしょう。


#30 試合前の食事はどのような構成にすべきでしょうか。やはり当日は
気合いを入れて、スペシャル料理を準備する必要があるんでしょうか?

まず第一に、競技の数時間前に摂ることにより、格段の競技能力(超能力)が
出せるような食物は存在しないということを理解していただく必要があります。
適正な栄養計画は、シーズンなどに左右されない年間をとおしての課題と云え
ましょう。競技当日には、むしろ食べない方がよいと思われる食物もあります。代表的なものとして、脂肪や肉は一般的に消化に時間がかかるようです。競技の4時間以内に摂取された場合、おなかがもたれて、本来の競技能力を妨げる要因ともなりかねません。当日の食事として避けるべき食物は、他にも、ガスが貯まりやすい食物、脂っこい食べ物、スパイスなどによって味が濃い食物があります。炭水化物は競技当日の食事の根本をなすものですが、遅くとも3時間ほど前には摂っておくべきでしょう。炭水化物は容易に体内で消化され、血中グルコースのレベル維持に大きく貢献します。血中グルコースのレベルそのものが、精神的な安定感(すなわち、良い気分)をもたらすことになるのです。結論的には、競技直前及び当日のメニューについて、”こうである”とか”こうしてはならない”というものは決してありません。競技当日の食事といっても、普通に摂っているものと大差があってはならないというところでしょうか。競技者が過食をしたり、胃腸に不快感を及ぼすような食物を摂らない限り、競技能力そのものが競技直前および当日の食事のために直接的な影響を受けることはまず考えられないこと云えましょう。気合いの入った親爺さんが日頃から食が細い軟弱な倅を朝から叩き起こし、「今日は勝負の日」だからといって、「敵に勝つ」ように、「ビフテキとトンカツ」を無理やり食わせることは絶対に止めましょう。


#31 最近息子が試合前に流動食(ゼリー)を摂っているようですが、
よいアイデアといえるのでしょうか?

たいへん良いアイデアと云えるでしょう。ますます普及しているようです。最近は
いくらかの流動食が商品化され手軽に購入できるようです。多くの消費者の嗜好
に合うように香りや味が工夫されており、バランスのとれた栄養食品であると云えます。大部分のゼリーは炭水化物をベースに適量の脂質と蛋白質が加えられています。若者にはたいへん美味しい味付けで滋養にも富むほかに、容易に消化され、胃の中から速やかに消えてしまいます。水分とエネルギーを同時に摂取できる優れものなのです。同時に競技者自身の主体的な効果も注目されます。
ゼリーを口にした競技者は食欲が満たされた満足感をおぼえ、空腹感からくる
不安から免れることができるでしょう。神経性消化不良、下痢、吐き気、嘔吐、腹部けいれん、腹痛など、競技前の食事にともなう副次的な不快感は、流動食にすることにより最小限にくい止められる期待があります。流動食に慣れていない競技者にとっては新しい体験であるでしょうから、これを競技前の食事として定着化するにあたっては、慣れるまでの調整期間が必要となるでしょう。コーチはシーズンのはじめにとりいれて、その栄養的な利点を十分に説明しておくべきでしょう。もちろん、どのような競技者であっても、流動食に適合できない競技者に対しては無理に強要してはなりません。


《水分の必要性と熱障害に関する質問》

#32 競技者は練習中や競技中に水分を補給することを許されますか?

科学的な考察に乏しかった古い時代の根性ラグビーでは、練習中に水を飲む
ということは邪悪なことと捉えられておりました。将に、「欲しがりません、勝つまでは」の世界であったのです。そんな悪しき時代が去り、科学に基づいた新しいスポーツ科学が構築されました。現在ではいたく当然のことでありますが、念のために・・・。飲料水は練習、トレーニング、練習試合、公式試合などいかなる場合に拘らず、制限なく用意されていなければなりません。いわゆる水の飲み過ぎは、競技者のパフォーマンスを損なうものではありません。ただし、一度に多量の水をがぶ飲みすることは気分を損ね、身体運動にブレーキをかけるおそれがありますので注意が必要です。もっとも良い給水方法は、しばしば水飲み小憩をとって、その日の気温、湿度、練習レベルに応じて給水させることでしょう。スクイズボトルなどを活用して頻繁に給水の機会を与えることは、まとまった休憩をとってその間に多量の水をがぶ飲みするよりはるかに生理学的に合理的な方法でしょう。同時に練習時間をより有効に使うことにもつながります。あまり胃にもたれず、すぐに吸収されるような低糖度の冷たい飲料が理想的といえましょう。60分以上継続されるハードな運動の場合は給水が必須であり、効率的な補給は練習効果、および試合実績そのものに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。


#33 高温下でのトレーニングや競技中には、
競技者は塩分を摂取すべきなのでしょうか。

高温下でのトレーニングや競技では、多量の発汗作用がなされます。体内の塩分もいくらか出ていきますが、それ以上に、体内の水分が失われていきます。
競技者が塩分損失を補おうとして、適当量の水分を摂ることなしに塩分を摂ることは危険なアンバランスをまねくことになるでしょう。このアンバランスは、競技者が摂取する塩分と飲料水との割合を調合することによって避けられます。通常、塩分は通常の食事でまかなわれる量で十分なのですが、高温多湿下の条件での塩分損失量はかなりの量にのぼるおそれがあります。その際は塩分の量に応じた水分の補給が必須となります。0.5gの塩分に対して、500cc程度の水分補給という割合は常に守られるべきでしょう。


#34 熱障害の兆候や症状はどのようなものですか?

コーチおよび競技者は、身体状況や熱障害タイプの根拠に基づいて、症状を
熟知しておく必要があります。熱けいれん、熱ばておよび熱射病はすべてが
突発的な事故であるといえます。熱けいれん、熱ばてについては、よほどの
ことがない限り生命そのものを脅かすほどのことではありませんが、症状や
事後の処置不全によっては、もっとも重篤な熱射病に進行する可能性も示唆
されていますので十分なケアが必要です。

熱けいれん---筋のけいれん、多量の発汗、疲労倦怠感、(体温は平常)
熱ばて-------衰弱、疲労困憊、頭痛、めまい、吐き気、多量の発汗、皮膚温の
        低下、脈拍上昇、場合により意識喪失、、(体温は平常)
熱射病-------異常歩行、頭痛、吐き気、虚脱、発汗なし、熱く乾いた皮膚、
        精神錯乱、意識喪失、(甚だしい高体温)

発汗機構が不全に陥ったときにかなり危険な状態となるでしょう。皮膚が乾いて
熱くなっている状態での体温は急激に上昇しています。体温が40.6°を越えると元に戻れない危険性が増します。熱射病対策は体温の変化よりもっと早く出る兆候を見逃さないことです。頭痛、錯乱、吐き気、歩行異常、意識喪失などがこれに当てはまります。たとえ、どのような条件であっても、それらが熱障害を示す特有な兆候であるならば、緊急処置が必要となります。


#35 トレーニング中や競技中に熱障害が発生しました。近くにドクターが
いない場合、どのような手だてを講じればよいのですか?

@ 近くの人に手助けを求めましょう。一人では対処することはかなり困難だと
  思われます。協力者が必要不可欠です。
A 救急車出動を要請し、熱障害患者であることを冷静に伝えましょう。
B @Aと並行して、ただちに患者の衣服をすべて脱がせます。
C その場でできるどんな方法でもよいので、ただちに患者の身体を冷やしま   す。・飲料水 ・水撒き用のホース ・水筒 ・小川の水をバケツに汲む など
  救急車到着までの間、ずっと継続します。水を切らさないように!!
D 病院に搬送されるまでの間、救急車の中でもスポンジやタオルなどを使っ   て、継続的にたっぷり氷水を使って冷却します。

これらの非常事態を迎えないのがベストであるのですが、突発事故はいつどこで
発生するか予測がつきません。部員の家族への緊急連絡先などとともに、救急マニュアルを常備しておくことが肝要でしょう。(了)